陸曹候補生試験の内容 | 正社員自衛官になるために
2016/07/05
これから陸上自衛隊の陸曹候補生試験について書いていきます。
まず陸曹候補生試験とは、陸上自衛隊の昇任試験のことで、これの受験資格者は全員「陸士長」という階級の者です。
陸上自衛隊の中での陸士長とは、一般的なところで言うと、契約社員と同じような感じです。
任期制の隊員とそうでない隊員がいますが、どちらの場合も試験に合格しない限り最終的には解雇となり、陸上自衛隊を去ることになります。
その場合、就職指導なんかでだいたいは次の職場を紹介してもらえますが、あまり良い噂は聞きません。できれば辞めたくないですよね。
要は、陸上自衛隊でずっと働きたければ試験に合格しなければいけないということです。
そんな、陸上自衛官にとってとても大切な試験について、概要を書いていきます。
陸曹候補生試験の概要
陸曹候補生試験は、筆記試験、実技(術科)試験、口述試験(面接)、体力試験の4項目から成ります。
各部隊によって細かい試験方法は違うのですが、その根本は同じなので採点項目等は変わらないと思います。
ぼくが陸上自衛隊に勤めていた時にいた部隊では、一次試験として学科試験を受験し、それに合格した者は二次試験として実技(術科)試験と体力試験、口述試験を受験する
といった流れでした。
一次試験である筆記試験の内容については、一割が一般教養、他全てが自衛隊内の問題です。
自衛隊内の問題について具体的に言うと、「教範」という自衛隊内の法律やら決まり事やらを書いてある本、まぁ教科書みたいなものの内容が問題として出されています。
その答えは一語一句間違ってはいけないのでなかなかシビアだと最初は感じましたが、自衛隊で勤務していると自然と覚えていることも多いので、絶対にやればできます!
ぼくはやりませんでしたが、勤務していた時の記憶だけで一次試験に合格したこともあります。
ということは逆に、一次試験を合格できなかっただけで「あいつは普段真面目に仕事をしていないんじゃないか」という理不尽な疑惑が生まれてしまうこともあるかもしれません!
先輩からの理不尽ってすごく怖いです。受験する以上は真剣にがんばらないといけないということですね。
二次試験は、体力試験、実技(術科)試験、口述試験の順で行われていました。
まずは体力試験。内容は、自衛隊の体力検定で行っているものと同じです。
腕立て伏せ、上体起こし(腹筋)、3000メートル走を体育服装(ランニングパンツ、ランニングシャツ)で行い、
50メートル走、土嚢運搬、立ち幅跳びをフル装備で行う、計6種目のものです。
ちなみにフル装備とは、迷彩服に防弾チョッキを着て鉄棒をかぶり、弾納、水筒、救急品袋、銃剣を装備し、防護マスクと銃を持った状態です。夏だと非常に過酷です。笑
この試験に関しては、不合格になる隊員は少ないです。全員陸士長ということで若手が多いんです。
体力検定ということで点数がでるので一見重要かと思われる体力検定ですが、陸曹候補生試験では実はそこまで重要視されていません。
なぜかと言うと先ほども言ったとおり、若手ばかりでだいたいの隊員がそれなりにできて差が開きにくいからです。
また、体力検定の基準が平成28年度から変わったのも差が開きにくい要因の1つです。
平成27年度までの体力検定では、現在の体力検定でフル装備で行っている3種目が無く、代わりに軽装で懸垂、走り幅跳び、ボール投げが行われていました。
その3種目が苦手な隊員がちらほらいて不合格も多少出ていて、それでもしっかり点数も出ていました。
しかし現在の体力検定では、フル装備で行う3種目の点数が出ません。合格、不合格だけだそうです。
しかもその基準が、50メートル走が15秒以内、土嚢運搬が1分以内、立ち幅跳びが90センチメートルという非常に易しいものになっています。
そりゃ差なんて開きませんよね。なので、これから陸曹候補生試験を受験しようと思っている方は、他の練成をした方が良いと思いますよ。
まぁ、今の体力検定に合格できるならの話ですが。笑
続いて実技(術科)試験
この試験は、少し特殊です。自衛隊の基本教練の拡大版、分隊教練というものの分隊長動作を採点される試験です。
意味がわかりませんよね。噛み砕いて説明します。
まず基本教練とは、隊員ひとりひとりができなければいけないもので、全自衛官ができる共通の動作です。敬礼とか気を付けとか、そんな感じのやつです。
分隊とは、6~10人程のグループを言い、分隊教練とはそのグループが全員同じ動きで行進等をするものです。
そして分隊長はそのグループの指揮官で、この試験ではその指揮動作(号令等)や自らの基本教練を採点されます。
分隊を指揮して動かすわけですが、この試験ではその動かすコースも決められています。
ぼくがいた部隊では3種類のコースがあり、本番直前にその中の1コースを決められるわけです。
受験者はみんな3コースとも覚えて、ひたすら繰り返して練習してました。
この練習の時に、分隊長動作として号令の練習もするのですが、声出しに慣れていない隊員ははすぐに声が枯れて出なくなります。
喉から声をだすんじゃなくてお腹から出すんだとか。ぼくも教えてもらってようやくわかりました。ぼんやりと。
この試験で大事なのは、号令と基本教練です。
自分ができていないと人に教えられないっていうのと、後は気合が大事らしいです。自衛隊らしいですね。笑
この試験は、初めて二次試験を受験する隊員から見れば少し難易度が高いです。
しかしきちんと練成して数をこなせばすぐに慣れてできるようになります。気合です。
最後に口述試験(面接)
この試験は、得意不得意ではっきり分かれます。
人と話すのが好きな人、得意な人は当然得意で、あまり話ができない人は苦労しています。
どうしようもないところはあると思いますが、それでも十分対策はできます。
一番の対策は、勉強することです。
質問される内容はだいたいが自衛隊のことであり、それは当たり前のことですが、すごく大事なことです。
しっかり自衛隊のことを勉強し、自分の考えを持って試験に臨めば怖くないと思います。
しかし注意したいのが、ノーマークの、答えを全く準備していない質問をされた時です。
ここでテンパッてしまうと最悪です。
「テキトーに答えてしまってそこを突っ込まれ、自分でも何を言っているのかわからなくなった」
なんて話もよく耳にします。
どんな質問がきてもまず落ち着いて、わからないことは「わかりません」と正直にすぐに答える。
面接って会話ですもんね。きちんと言葉のキャッチボールさえ意識していれば自然と乗り越えられるはず!
面接には勇気と自信を持っていきましょう。そうすれば、きっとあなたも立派な陸曹になれるはずです!
試験が終われば、後は結果発表を待つのみです。
結果発表はだいたい次の一次試験試験の一ヶ月前なので、勉強はしっかりしておきましょう。
もし不合格でも次がすぐに待っています。自衛官に落ち込んでいる暇はありません!
こんな感じで年2回、陸曹候補生試験が行われています。
今陸士で、永続するかどうか迷っている方は、受験してみてはどうでしょうか。
そうすることでもっと自衛隊のことが分かり、仕事の価値観も変わってくるかもしれませんよ。

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Comment
新しい体力検定の2法ですが一応フル装備でやりますよ
来年に自衛官候補生として入隊しますが、その年の一般曹候補生の試験は受けられますか?
また、部内からなるより一般曹候補生と入隊するのが曹になりやすいですよね?
試験は受けれます。内部から云々は関係ありません。
いつも楽しくブログを見させて頂いてます^^
質問なのですが
一般曹候補生と自衛官候補生で陸曹候補生試験の試験内容の差があったりしますか?
例えば一般曹候補生は1次試験免除〜などです
ありませんよ。
競争する枠が違います。
入隊区分が一緒の人同士が競い合います。
返信ありがとうございます
競争する枠が違うんですね!
ちなみに一般曹候補生(陸)で入隊したとして、全体の何割くらいが3曹になれるのでしょうか...?
また一般曹候補生は最短で2年と数カ月で3曹になれると自衛隊のHPに書いてあったのですが、一回で昇任試験に合格する人もいらっしゃるのですか?いたとしても少数なのでしょうか...?
現在大学生なので高卒の方より遅い入隊となってしまうので体力面も不安ですし、できるだけ早く3曹になりたいです。
長々と質問すみません
宜しくお願いします!
何割かわかりません。
一発昇進はいても少数です。
がんばって筋トレしましょう。
今年陸士長になりました陸曹候補生試験を受けるのですが合格率はどのような感じでしょうか? 駐屯地などで差があるのですか? 一番難しいのは二次試験の面接でしょうか?以上質問させて頂きます。
ここで質問するよりも、指導してくれる班長に聞いた方が確実ですよ。
任期制で入隊が決まりました。曹になり、定年近くまで働くつもりです。難関大を中退しての入隊なので、勉強ができないわけではないのですが、授業というシステムが大嫌いでほぼ独学で学生生活を送りました。自衛隊の中で昇任試験に向けて勉強していく際、授業は多いですか?本を渡されて、あとは自分でやれというのが理想なのですが、実際はどういった様子でしょうか。また、入隊してすぐに試験に向けて勉強したいのですが、筆記試験の多くを占める教範が短期間で更新されていくことを最近知りました。最新版がでるまでは取り組まないほうがいいですか?
筆記試験の多くを占める教範が短期間で更新されていくことを最近知りました。最新版がでるまでは取り組まないほうがいいですか?
について、そんなに短期間で変わらないですよ。
候補生で入隊決まりました。難関大中退しての入隊なので勉強はできますが、授業というシステムが嫌いです。曹への昇任のための筆記試験の内容は 長時間の授業で学びますか?それとも本を渡されてあとは自分でやっておけとほっておいてもらえますか?
教育隊は授業スタイルです。
教育隊を卒業したら自分でやっておけというスタイルになります。
自分は自衛隊は職種によって仕事は多種多様だが、どこにいっても体力的に過酷で激務で、継続的にたくさん勉強しなければならないイメージで候補生の入隊テストを受け、合格したのですが、最近周囲の人やネットによると普通科はほとんど頭使わない体力だけあればいいところみたいに言われて普通科で勉強も体力錬成も共に頑張ろうと考えていた自分はかなり戸惑ってます。もちろん国に貢献したいですが、思考停止のコマみたいに働きたくはないです。かといって楽勝で幹部試験を突破できる気もしません。普通科の中でも幹部以外のポジションで頭脳を積極的に活用できますか?普通科希望だった私は今ものすごく不安になってきました。詳しくお願いしたいです。
普通科の本部管理中隊をおすすめします。
専門職の集団なので。
失礼します。
幹部候補生の試験内容わかりますか?
大学を卒業したら自衛隊に入ろうと思うのですが、どのような内容なのでしょうか?
広報官に聞くのが一番です!
任期制で入隊し今年陸曹候補生試験と准看護師課程を併用で受けました。
父子家庭で自分の入隊と入れ替わりで父が定年退職しています。
誰かの役に立ちたい、助けたい、そんな漠然とした理由で入りました。
趣味が行かせる部隊に配属されましたが、辞める理由もなく、1任期が過ぎました。言われた事を素直にやって来ました。辛い事もあったけどやり甲斐がありました。
営内班長との面接資料の作成をしている内に、自分は自衛隊にとって陸曹にしたい人材ではないと思いました。別段、愛国心が強い訳でもないです。いけと言われたらいきます。それが仕事だからやります。ただそれだけなんです。今まで育ててくれた親の為にも安定した職である自衛隊を続けたいだけです。先任には動機はそんなもんでも良いんじゃない?って言われました。
最初は災害派遣等で窮地の国民を助けたい。任務遂行の為に部隊の人を助けたいって動機のようなものがありました。否定されたら何も残ってなかったです。前期、後期の班長、班員。原隊の先輩、同期、後輩、皆良い人達です。とてもお世話になってます。やってないこと、思ってもないこと書きたくも言いたくもないことばかりの面接を受けたくないです。
絶対に陸曹になってやるぞと熱意もない。所詮お前にとって自衛隊はそんなもんだと言われているようで、冷めている自分が嫌になりました。
答えを求めているわけでないと思うんですが、誰かに打ち明けたかったです。