元自にーさん(元自衛官)の自衛隊ブログ

新隊員、自衛隊や自衛官に興味がある人に自衛隊について色々と学んでもらえるようなブログを目指しています。

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海上自衛隊・航空管制官が見たヘリパイ教育

      2016/12/13

航空学生だって人の子だもの

山口県にある小月航空基地は「221教育航空群」「201教育航空群」「203整備隊」そして私が所属していた「小月航空基地隊」で構成されていました。

「221校行く航空群」とは私たちが海自に入隊して初めて入る教育隊と同様なシステムで海上自衛隊のパイロットになるための第一歩の教育期間として座学、体力を1年間かけてみっちりとつけて「201教育航空群」へステップアップしてシミュレーター訓練を経て実機でのフライト訓練を行ない修了後には回転翼、固定翼いずれかを選ぶ非常に大切な教育機関です。

私たちが教育隊を修了して術科学校へ入校する過程がこの小月基地内で一括して行われるイメージです。

しかし221から201へ昇格した際には学生隊舎が違うので、ダンボールを抱えてのお引越しが行われますが、これもパイロットになるための通過儀礼のひとつでしょう。

また航空学生は昇進が早く、4月に入隊してきた時は2等海士なのに、約1年後201でフライト訓練を行う時にはすでに3等海曹になっています。そんな彼らの後方支援を行うのが「203整備隊」であり、小月航空基地隊の一般隊員たちです。



航空学校入隊式

221への入隊は年に一度4月に行われます。私たちが教育隊に入隊した時と同じように入隊式の一週間ほど前に着隊し、必要最低限の所作教育を受けて来たる入隊式に臨みます。

この日ばかりは親御さんも入隊式に出席し本当に希望に満ち溢れた雰囲気が基地全体を包みます。

これから始まる人並み外れた厳しく激しい訓練の日々を思うと「笑顔で入られるのは今日だけなんだろうなぁ」と思いながらも快くお迎えしたものでした。

よくあることですが、この子たちも高校を卒業してすぐに親元を離れ一般社会と隔離された場所に身を置く事になるので、私の同期にもいましたが入隊式を終えて親御さんと別れるのが嫌で全国から集まった子供たちの胸には日々故郷への思いが募り、初めての外出日には故郷まで足を伸ばしてしまい、帰隊しないで教官たちが街へ捜索に出たり、実家から親御さんに付き添われて帰ってくる子もいたりというのが年中行事でした。

彼らは良く教育されていて外出する際には必ず複数人で詰所の前まで行進して来て1列横隊に整列して「221教空外出員○名」と申告して外出し、帰隊時には同じく隊門を入る前から同様に詰所まで行進してきて帰隊申告を行います。

時には普段抑圧されたものから解放されてつい駅前の居酒屋で飲酒をしてベロベロに酔って帰隊する者もいましたが、私たちも経験があるのでそのへんはキツく当たりませんでしたが、ごく稀に一般市民の方から「自衛隊の学生さんが居酒屋で飲酒しているが未成年じゃないのか」などと耳の痛いクレームが入ってくる事もありました。

そんな彼らですが、221在籍中は私たちより階級も序列も「下」になるので、普段から隊内ですれ違う際には直立不動で敬礼をして来ますが、部内ではまだまだ下っ端だった私にも敬礼してこられるので、答礼するのが気恥ずかしいものでした。

それが1年経ち201へステップアップするととんとん拍子に昇進していきますので、ついこの前まで敬礼していた子がいつの間にか私より階級が上になっていて、今度はこちらから敬礼しなければならなくなることが通例になっていました。

しかし221の学生の訓練を見ていると教育隊での私たちの姿や苦労を思い出したものです。



教育隊での苦労

201へステップアップした彼らが教官と実機訓練に入る頃には私も航空管制官の教育期間を修了して原隊へ戻り、管制塔から彼らを直接サポートする側へ回っていました。

管制官としては下っ端の私などは先輩より早く管制塔の電源を入れ、ボイスレコーダーのスイッチを入れ国旗掲揚前にフライトを始める学生からの無線チェックを待ちます。

そうこうしているうちに先輩たちが管制卓につき、20機ほどの無線チェックの対応に入ります。

「なんだか自動車教習所みたいですね」と最初の頃に言った記憶があるくらい、同じ機種の飛行機が格納庫から出され無線や機体のチェックをしています。そんな時間帯に無線機から聞こえてくる学生の声は一様に緊張の色が混じっています。

そしてフライト開始の時間、我先にと次から次へ学生たちから「リクエストタクシー」と滑走路手前のランナップエリアへ向かう地上走行のリクエストが入って、一瞬にしてランナップエリアには5〜6機の機体が私たち管制官からの離陸許可を待っている最も緊張する瞬間です。

そしていよいよ学生の上ずった声で「レディ」の声が無線機から入ってくると、私たちは順番に離陸許可を与えます。

フライト中の教官と学生の会話は操縦桿にICSという交信機がついておりそれを使うのですが、時折管制塔との交信用のトランスミットボタンを押して「教官、ここはどうすれば…」などの間違い送信が入ってきたりしますが、そんな時は教官もわざとトランスミットボタンを押しながら「ICSを押して話せ」とツッコミを入れている様を伝えてくれます。緊張の中にあってリラックス出来る空気を教官が学生に作ってあげている瞬間です。

いくらエリートのパイロットでもまだまだ訓練生、人の子だから間違いもするし初めて3Gくらいの重力を体験したら吐き気を模様する者だっています。

そんな苦しみを乗り越えてこそ憧れの「ウィングマーク」を胸につけることが出来るのでしょう。

「努力は必ず報われる」とアイドルグループが言っていましたが、まさにその姿を見せられた気がします。

「今、この瞬間」にも海自のどこかの基地ではフライトが行われていることでしょう。

「空を飛んでみたい」という人間の願望を実現した人たちは私にとって尊敬に値する人たちです。

 - ヘリパイ, 海上自衛隊




kotirade

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