元自にーさん(元自衛官)の自衛隊ブログ

新隊員、自衛隊や自衛官に興味がある人に自衛隊について色々と学んでもらえるようなブログを目指しています。

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自衛隊は災害派遣に行くとこのような食事をしています。

      2016/12/12

前回の記事はこちら

自衛官になって初めての災害派遣|背嚢準備編

さて以前は災害派遣においての背嚢の準備について説明しましたが、いざ災害派遣となると忘れてならない車両があります。

三トン半(73式大型トラック)でも高機動車でもありません!

その名も……野外炊具1号!!

……とまあ、このように書けばとても冗談みたいな名前ですが、これ実際にあります。

そもそも野外炊具もとい炊事車とは何か、一言で言えば自衛隊が野戦する際や災害派遣に野外で炊飯炊事する為の専用のトレーラの事を言います。

高機動車に牽引して運ぶ事のできる炊事車……もともとの発想が第二次世界大戦にさかのぼります。



軍隊では暖かい食事が不可欠

戦場など過酷な場所に置いて温かい食事とは重要なものとなります。

誰しも冷えたご飯や缶詰など毎日食べ続けるのは無理があります。

食事とは身体の栄養もさることながら心の栄養も摂るために必要となります。

この様な戦場で野外で気軽に調理する為に開発された炊事車……第二次世界大戦の最中にまたは戦後からも開発が進んでいき、無論自衛隊でも採用される事となりました。

特に日本のお国柄。

第二次世界大戦中には兵站で失敗してしまい、『餓え』と言う敵に敗北してしまった経緯があります。

特に言えば食料で敗北したのです。

ナポレオン曰くに……『軍隊は動く胃袋である』とのくだりがあります。

とにもかくにも軍隊とは消耗の激しい組織であり、それは人員に至るまで装備や資金に食料などを大量に消費します。

その中でも食事とは一番重要な部分を指します。

暖かい食事と美味しい食事を食べる。

そんなコンセプトで追及された炊事車……各国の中でも陸上自衛隊は野戦用調理器具の開発に力を入れました。

どのようにして美味しい糧食を届けるのか、どのようにして調理していくのか、その基本の元で開発されたそれは、自衛隊の活躍の幅が広がっていく中で、野外での大人数に対する調理方法はどうすればいいのかと、その活躍の思想は災害派遣を前提に改良されていきます。やがてこの炊具車は航空自衛隊でも使用されるようになり、調理機能を有する自走できる炊事車を開発し、今に至るわけです。

そんな炊事車・・車両に炊具を搭載しているせいか、隊員達には炊事車、炊事トレーラとも呼ばれております。

その用途は主に野外で糧食を調理する為を前提にし、兵站の重要や要となっています。

目的位置に移動する際は車両で牽引し、また牽引している走行中でも炊飯が可能だったりします。

様は高速で牽引されながらも食事を作る事の出来る、そんな車両なのです。

でも実際には移動しながら炊飯を行う事は絶対にありえません。

一応理論上可能であるかもと言う事であり、実際にそんな無茶苦茶な使い方をすれば、内部バーナーの芯が折れてしまい、またネジなどが緩んでしまい火災発生の危険度がある為に、絶対に走行中で調理はするなと、整備班長からの厳しいお達しもあります。

でも一度だけ、どこかの駐屯地祭の演目演習で走行中の調理を披露したという都市伝説を聴いたことがあります。

(注意・筆者のいた部隊もしくは駐屯地では絶対に禁止されていました)

その時に走行中に出火してしまい、大惨事になりかけたという話がまことしなかに語られていますがその真意は解りません。

とにもかくにも走行中の調理は機器故障の誘発性が非常に高い為に、絶対に走行中での使用は厳禁となっているこの炊事車。

その基本装備は灯油バーナーを使った炊飯器計6基を装備し、およそ600人分の御飯を炊き上げ、積載した調理器具はおかずの調理も可能となっております。

例に挙げたら・・お味噌汁なら搭載されている計6釜なら2000人ほどのお味噌汁を作る事が出来ます。

御代わりは不可能かもしれませんが、沢山の人員に向けての調理を可能にしたそんな炊事車。

これは1号と2号があります。

阪神大震災後に多くの人員の為に調理をと、その改良の思想の元、炊事車には小型ガソリンエンジンを装備されました。

また圧縮空気を創りだすコンプレッサーに調理用カッターなど、調理に特化した装備が施されていきます。

またエンジンが不調で圧縮空気が使用できない時には、トラックや高機動車のエアタンクかの圧縮空気供給が可能になり、86式灯油燃焼バーナーを装備しており、基本装備にはお玉にご飯をよそう木べらなども充実しております。

お玉に木べらと一見冗談を書いているようですが、これらは基本装備であり、無くせば大問題になりかねない、大事なものです。

実際この装備は使用することなく、近くの100円ショップで買ったお玉や木べらなどを使用するのが基本となっています。

まあ官給品の大事さが身に染みている自衛隊では、なるだけ官品を使用しないとの根幹があるため仕方がないのです。

さて話を戻して、まずこの86式バーナーは、この炊事車の重要な部品となっております。

このバーナー本体には専用のノズルがあり、このノズルは使用後または月に一回の点検があるぐらいに重要な点検が行われます。

それこそ小銃よりも真剣な点検でした、著者もこの点検に一日を費やしたことがあります

なにせこのノズルが使用できないとこの炊事車は使用できなくなる重大な欠点があるのです。

だからこそ予備部品として炊事車両1車両につき、必ず1本の予備が用意されています。

それにこのノズルは劣化が早すぎるとも、もう一つの欠点もあります。

少しの衝撃で簡単に内部が破損してしまう非常に扱いがデリケートな部品。

取り扱いと点検に管理には当然モスが必要になります。

無論モスの試験もあり、点火に消火などが重要でちゃんと教本と教練どおりの動きで行い、定められた方法で行わなければいけません。

もし誤った行動をしてしまうと着火しないどころか、安定した火力をまったく維持できずに調理ができなくなってしまうと重大な欠点もあり、しかも使用後に消火確認後も徹底して行われます。

なぜならちゃんとしないと下手をすれば爆発してしまうからです。

(注意・これは大げさではなく、本当に爆発する危険があります)

消化後の確認の際は、再度エアコックを解放し、ノズルの内部に残っている微かな燃料や煤を除去しなければいけない程の重要な車両なのです。

下手をすれば戦車よりも扱いが大変かもしれません。

この車両が造られる前、野戦釜と呼ばれているものがありました。

無論お役御免とは一応なっていますが、まだ現役で使用されています。

使用時、野外炊事車には付属品に予備燃料タンクが携行されています。

炊事車だけでは間に合わない調理の際に、直接接続して野戦釜と一緒に使用する事もあります。

この様に書けば炊事車は役に立つのかと思われますが、実際の最大炊飯能力はものすごく、炊飯のみなら搭載されている6釜で600人から800人分の御飯が作れます。

災害時は食べやすさと配膳重視でおにぎりで提供しますが、おにぎりなら1000人分は軽くいけます。

また主食と副食に汁物の調理など行えば約300名は作れますが、焼き物系の調理はほとんど不可能であり、焼き物系以外の主食を作ります。

解りやすく言えば煮込み系が最適です。

焼き物系も一応に作れますが、もし焼き物の調理をするなら釜ひとつで約数十名分しか作れず、構造上釜型なので調理しにくく、もし焼き物系を作る際は鉄板を用意して、その上で焼き物を調理する方法を取ります。

ただ数百人分を一度に作る事を想定しているこの炊事車。

基本は煮込みで主食を作ることが前提になっています。

筆者も日米合同演習の際にグアムでおでんを作っていた過去があり、常夏のグアムでおでんを作る心境はおいておきますが、やはり煮込みの方が早く作れると、使用した際にはそう実感しております。

さてその炊事車の調理使用方法ですがこのようになります。

まず6ある釜の使用方法は1つ目と2つ目の釜で主食を作り、2つ目と3つ目の釜で炊飯を行い、4つ目の釜で副食調理を調理し、5つ目の釜で汁物を作り、最後の6つ目の釜は洗い物用及び湯沸かしをして使用すると、一連の仕様方法はこうなります。

またこの炊事車には調理用のカッターが内蔵され、炊事車には裁断調理を手助けしてくれるエンジンで動く交換式低中速回転式カッターが内蔵されており、野菜の輪切りに乱切りに小口切り、またぶつ切りに千切りと、最後にはおろしも出来る優れもの。

また皮むき器もあり、円筒内部の調理機の中が野菜の皮むき器となっています。
これもエンジンからの動力回転でジャガイモやサツマイモの皮むきが非常に楽ですが、難点は皮むきを行う際には必ず多量の水を用意しなければいけない難点があります。

水源が近くにあるところか水道の近くでの使用など、使用方法が限定されていますが、使用できる時にはこれほど頼もしいものはありません。

でも手入れが大変なのであんまり使用できないので、大抵の皮むきは人力で行うのが現状と本末転倒なところがあります。

と、このように調理に特化したこの炊事車。

災害派遣時には頼もしい味方となってくれますが、整備方法が大変であり、また使用方法が難しいの難点があり、いまいち炊事担当の人間には不評で、野戦糧食でいいだろうと言われがちですが、やはり手作りの御飯を食べたいのが人情であり、その為ならと払拭できるぐらいに利便性のある炊事車なのです。

筆者も災害派遣時にこの炊事車の担当となり調理をしたことがありますが、感覚的に言えば屋台のような感覚でした。

災害で疲弊した被災者の方々に「おいしい」と言われた時、嬉しかった思い出があります。

映画やドラマの中で自衛隊が登場する時に必ず出て来てくれるこの炊事車を見るたびに、そんな想い出を思い出させてくれる、かつての苦楽を共にした炊事車。

今に思えば一番の思い入れのある装備だったと思います。

災害時の心強い味方!3トン半水タンク車

 - 災害派遣






Comment

  1. とある提督 より:

    Twitterではお世話になってます^^
    ブログがあると知り来ました!!
    無反動砲手だったんですね!
    自分は元情報小隊斥候班長やっていました。
    まぁ、何やかんやで中隊長のDr勤務の縁でと情報小隊という環境のせいで連隊長~各科長の臨時のDrなんてものも別任務でやってたりもしまして・・・(笑)
    災害派遣となると自分は第一種だったので真っ先に招集されていました。缶飯とレーションしか食ったことなかったですが!
    炊事車は便利ですよね!
    走行中にも飯を炊いたりできるし(やってる部隊は見たことないですけど)
    これからもちょくちょく見に来ます(‘◇’)ゞ

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