元自にーさん(元自衛官)の自衛隊ブログ

新隊員、自衛隊や自衛官に興味がある人に自衛隊について色々と学んでもらえるようなブログを目指しています。

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自衛官になって初めての災害派遣|背嚢準備編

      2016/12/12

23.3.15 2D:捜索(野田村)⑰

自衛隊において……しこせきだん、と言う言葉があります。

これは自衛官の心構えを覚える為に使う語呂で、しこせきだんを以下の様に説明すればこのようになります。

し……使命の自覚

こ……個人の充実

せ……責任の遂行

だん……団結の強化

と、この様になります。

使命の自覚とは、自衛官の使命とは国民の防衛の為であり、個人の充実とは自身を鍛え練磨する事を指し、責任の遂行とは、任務に当たる上で必ず任務を果たすための意思であり、団結の強化とは、一人で成す事が難しく困難な事を自衛官全員で成せる為にと、自衛官が自衛官である為に持つ、いわば教えです。

そんな教えが最も真価を発揮する場所は……そう、災害派遣です。

災害派遣に従事していた時に、この言葉の意味がようやくに解ったのが、初めての災害派遣……洪水で沈んだ街の復興に従事した時に、ああ、しこせきんだんとはこういう意味だったのかと、そんな悟る事が出来た、そんな私の災害派遣の初体験を書かせていただきます。

まず私が最初に従事した災害派遣は、とある年に起きた台風による洪水浸水による被害を受けた某県での出動でした。

最初を説明すれば以下のようになります。

災害派遣出動が駐屯地に掛かった時間は、ちょうど夕方の15時ごろでした。

体力錬成の時間が近づいていましたが、洪水が発生したと駐屯地内に放送が掛かり、私はすぐに走るのを止め、自分の中隊へと向かいました。

丁度体力錬成が始まろうとしていた時間、私の配属する中隊の面々は全員が走る準備が整っていた、ランニング姿の隊員達が集まっていました。

当直陸曹から全員に通達が下ります。

某県において災害派遣の要請あり、すぐに各班ごとに準備と、命令が下りました。

すぐに走って営内の自室へと戻り、すぐにジャージを着替えて、戦闘服に着替えました。



そして背嚢を準備します。

ここで背嚢について幾つかの説明を。

まず、背嚢とは解りやすく言えば登山用リュックです。

よく富士山やエベレストを登る登山家が持っているような、大きな縦長のリュックサックの事、これを背嚢と言います。

大型の演習やまたは行軍訓練など、その際に背負うものですが、普段からは災害派遣用に荷造りをしています。

荷造り。

つまりいつ災害派遣があっても直ぐに迅速に対応出来る為に、常に準備をしていなければいけないのが、冒頭で述べていた「しこせきだん」の意味の通り、常に備える事が基本となっています。

この背嚢の荷造りは、要はいかなる時にもすぐに迅速に対応する為に、必要な物資を入れて置く用意のものだと言えます。

そんな背嚢の荷造りを説明させていただきます。

まず、背嚢の中には大きな黒のゴミ袋が入っています。何故黒のゴミ袋を背嚢に入れてあるのかといいますと、まず夜中で反射しない様にと、または防水の為にと、その用途の為に入れてあります。

防水。

この記事を読まれる方は知っていると思いますが、一応に言います。

自衛隊員は雨でも傘を差すことはありません。

まして雨具を使用する事もありますが、災害の際は雨具を着用はせずに、戦闘服をそのままに雨に濡れようが、水に浸かろうが、濡れる事に不快感を感じないように普段から慣れさせられています。

まず身体が濡れると……不快感が出ます。

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不快感。

その不快感を説明すれば、解りやすく体験する方法は、この記事を読まれた方が、今着ている服のままで、お風呂に入ってみてください。

下着を身に着けたまま、着ている衣類がびしょ濡れになり、お風呂からあがって見た時に感じる不快感は、言葉にしがたいものがあります。

肌にびっしょりと張り付く布の感触に、鉛よりも重く感じてしまう水分を含んだ衣服など、この感覚を一つに表現すれば不快感しかありません。

しかもこの服装のまま一日、ましてや三日、もしかして一週間、その上に一カ月ともなれば、もう語る必要はないと思います。

そう、びしょ濡れになるという事は……憂鬱なのです。

ましてや現代人。

清潔な環境に慣れていますので、よがれるのは避けたいものですが、自衛隊においてはそれは敵わぬことです。

そんな不快感を少しでも和らげる為に、ある程度の防水を考慮する為に、背嚢の中にゴミ袋を入れ、防水処置を施すのが、自衛隊の荷造りの基本です。

そして中にいれる災害派遣の様の荷物は以下のようになります。

番号で書いて説明いたします。



災害派遣・背嚢準備をもっと詳しく

まず、

1・一番奥底に着替え用の戦闘服をジップロックで防水処置をし、その後に靴下や下着類やタオルなどを同じようにジップロックで防水処置を行います。

2・次にL型のライト(官給品ではなく私物)や弾帯の予備(これも私物)や、皮手袋に軍手など(これも私物)を準備し、忘れていけないのがレザーマン・ウェーブ(有名な便利ナイフに事、ペンチにハサミにドライバーなど、必要な工具が一体化している、自衛官御用達の必須アイテム)など、自分が災害派遣に必要な物を入れて、背嚢を整えます。

3・すべて空気抜きをし、袋が破けないように処置を徹底して施してから、ようやくに背嚢の準備が完了となります。

大雑把に言えばこのようになります。

背嚢には常に、これらの物を入れて置かなければいけません。

でもただ入れるのではなく、あくまでそれらがすぐに使えるように色々と工夫しなければいけないのです。

まず絶対しなくてはいけないのが、防水の徹底です。

先程1で取り上げたジップロック。

お料理などのあまりの材料などを真空で保存できる優れもの。

これを荷造りの道具に応用することも可能なのです。

まず下着を例に挙げればこのようになります。

シャツやパンツなどを同じジップロックに入れずに、必ず一枚一袋を前提に小さく折りたたんだ下着をジップロックに入れ、そして空気を徹底に抜きながら、完全な真空状態にして、口をしっかりと閉じたら、その上に黒のビニールテープで口を衝撃で開かない様に処置をし、そのテープもいつでも外せるように先端を撮めるように持ち手を作り(ファスナーのチャックみたく、テープのあまりの部分を折り貼りつけ、指で摘まめる様にする部分のこと)ます。

そして水につけても水が一滴も入り込まない様に確認する為に、洗面台か洗面器に水を沢山に注いで、その注いだ水面に浸して水が入って来なければ防水完了となり、これでいつでも災害派遣に望めるとなりますが、上記に書いた通りの事を、中にはめんどくさいと言う人がいます。

そして普段から準備をしない隊員もいます。

いざ派遣出動になって慌てて荷造りをする隊員も……残念ながらにいます。

備えるのではなく備えよ!

それが自衛隊の常になるべき訓示でもあり、基本でもあります。

また私の居た中隊もとい駐屯地では、抜き打ちの背嚢検査がありました。

災害派遣に従事できるかどうか、常に背嚢の中に物品が備わっているかどうかを確認する検査。

大抵の隊員はちゃんと荷造りをしてはいますが、当然なっていない隊員もいます。

なっていない隊員とは?

まず、荷造りをしてはいますが、して以来放置して、すっかりとほこりまみれになっている荷物や、中にはカビが生えている下着など、いざという時にあまりにも用意できていない大隊員もいました。

この背嚢の荷物。

必ず一週間には必ず中身を入れ替えておくのが常識なのですが、それをサボってしまう隊員は、陸士だけではなく、陸曹にもいます。

もしそんな背嚢が見つかってしまえば、連帯責任となってしまいます。

筆者もこれで、腕立て伏せを何回した事か……

そんな事態に陥らない様に、普段から荷造りを喚起し、新隊員なら常に気にかけていました。

連帯責任が恐ろしい為に。

でもいざとなった時に、慌てて準備するのでは、あまりにも情けないのは事実。

私の中で背嚢の準備をする事が、しこせきだんの基本だと思っています。

使命の自覚とは、常に任務に当たる事が出来るようにと、個人の充実とは、いざという時に備えれると言う事、責任の遂行とは、自分だけではなく全員の問題になってしまわない為の備えであり、団結の強化とは、そうならない為の協力し合う仲間意識と、私の中でしこせきだんとはその様になっています。

災害派遣に出る際に、必ずその背中に背負わなければいけない背嚢。

その準備と備えが、自衛隊員にとっては重要なのです。

ただの荷造りではなく、災害に従事する為の準備。

これが背嚢のありかたなのです。

さて災害派遣の話はまだまだありますが、次は災害地のお話しを書かせていただきたいと思います。

今回の背嚢のお話しはここまで。

次回は災害派遣で自衛隊がどのような食事をしているのかを紹介します

自衛隊は災害派遣に行くとこのような食事をしています。

参考リンク 自衛官の心構え

使命の自覚

個人の充実

責任の遂行

規律の厳守

団結の強化

 - 災害派遣




kotirade

Comment

  1. もうすぐ1士の父 より:

    私の長男(18)は今春より一般陸曹候補生として大津駐屯地で前期教育、
    伊丹駐屯地で後期教育を受け、来月より衛生科員として部隊配属となります。
    (施設科の本部管理中隊の中と言ってました。←よく分かりません)

    長男は中3の時に高等工科学校を受験するも失敗。
    諦めきれず高1でもう一度受験。
    でも、失敗。
    それでも陸上自衛官になる夢を諦めず、
    地本の方のご協力のお陰で本人も予想していなかった「陸曹候補生」に
    合格出来ました。

    「元自にーさん」様のブログを拝読し、
    自衛隊での仕事と生活がどれだけ大変であるかが良く分かりました。
    (ライジングサンを読んではいましたが・・・)

    私と女房に安心を与えて下さり、ありがとうございます。

    • 元自にーさん 元自にーさん より:

      親御さんもこのブログを読んでいると知り、少し驚きました。

      本部管理中隊とは戦闘部隊のサポートをするところです。

      なくては部隊が回らないところですね。

      自動車で言うと右のタイヤが戦闘部隊、左のタイヤがサポート部隊みたいなものです。

      詳しくはこちらも読んでみて下さい。→本部管理中隊とは

      息子さんが弱音を吐いたときは力になってやってください。

  2. もけ より:

    こんにちは 元自にーさん
    お久しぶりです。元気にしておられましたか?
    もけです。

    ところで、ツイッターで元自にーさんはこのような事を仰っていました。
    「東北の震災に行った人と、
    東北の震災を見て自衛官になった隊員では少し考え方にギャップがある 」
    どのようなギャップなのでしょうか?もしよかったらですが、ブログでそのことについて触れてくれませんか?

    ご検討のほどよろしくお願いいたします。

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