元自にーさん(元自衛官)の自衛隊ブログ

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普通科の対戦車砲と小銃火器の違い!

      2016/12/12

後期教育が終わり、部隊配属される季節がやってきました。

大部分の陸上自衛官は普通科職種なのですが、後期教育は軽火器、軽迫撃砲、重迫撃砲と専門教育があります。

実はもうひとつ普通科隊員にとって馴染み深い教育があります。

それが対戦車です!

後期教育では軽火器手としての教育を受けるのですが、部隊に配属して一部の自衛官は対戦車を専門に扱うことになります。

幾つか対戦車兵器についての記事を紹介します。

参考
84mm無反動砲と01式軽対戦車誘導弾の違い|値段高すぎー

64式対戦車誘導弾|非常に扱いにくい兵器!

今回は元対戦車手に小銃火器と対戦車火器の違いについて記事を書いてもらったので紹介します。

 

私が『対戦車班』に所属していたと一般の人が知った時、大抵の人に聴かれます。

「対戦車ってなに?」

と。

まあ普通の一般人には解らないのは道理というもの。

無論、そんな人たちの中には、

「ああ、ラ○ボーみたくロケットランチャーで戦うの?」

とも言われます。

また、

「ピストルで戦車と戦うの?」

「マシンガンは使わないの?」

「小銃ってなに? 対戦車ってなに?」

そんな質問の為に、そこで今回は小銃と対戦車火器の違いについて説明させて頂こうと思います。

一応今の昨今ネットで調べたら直ぐに出る情報かもしれませんが、私が知り得る自衛隊内の小銃と対戦車火器の違いについて今回は説明させていただきます。

まずそもそも『対戦車兵器』とは何か?

専門的な知識云々の前に、軍事的な常識で言えば以下のようになります。

『敵戦車に対し、撃破または破壊する重火器』
を指します。

呼んで文字の如くに、対戦車兵器とは上記の文言と文字通りに対戦車戦を想定した兵器全般を指す言葉です。

一般的な兵器であるロケットランチャーとは、過去から現在まで至る映画を始め、ゲームや漫画にライトノベルに真面目な軍事小説ともに登場する、いわば『バズーカ砲』がその最たる例に挙げられます。



『バズーカ砲』

この上記に記した通り、代表的な対戦車兵器はまさにこれでしょう。

漫画の中では鉄パイプに眼鏡(スコープ)に銃把(グリップ)を付けたようなモノをイメージしやすいですが、一般的な人には「マシンガンの凄いモノ」と見られがちな部分があるので、それらをなるだけ分かりやすく説明する為に、まずは対戦戦車砲と、その経緯と諸元から説明させていただきます。

まず、第一次世界大戦の頃。

フランスとドイツ戦において初めて戦場に戦車が登場した時代。

第一次世界大戦前の戦争を経験した歴戦の人間すらも、その鉄の塊こと戦車が塹壕に攻め込み、歩兵を圧倒的に蹂躙する様から、その兵器は一躍第一次世界大戦の主役に昇りつめ、地上戦の覇者となった、そんな乗り物こと戦車。

分厚い装甲に覆われ、歩兵では対抗できずに、数多くの戦地において苦汁を舐める結果になってしまったドイツ軍は、その対抗手段に力を注ぎました。

まずは陣地構築には野砲こと『大砲』を常時装備する事が当たり前になり、また小回りの利く歩兵には、小銃用の徹甲弾や手榴弾など開発配備するなどして、戦車に対抗していたのです。

当初の戦車はまだ砲などは取り付けられておらず、敵地を蹂躙し、敵歩兵を圧倒する為の突撃の為の兵器だったので、上記のような兵器でも対応はできたのですが、いつしか戦車には砲が搭載される事が当たり前になり、また徹甲弾もしくは野砲で容易には抜けない重装甲を装備するようになり、丸みを帯びた形などになり、戦闘を経験して進化し、開発されていった戦車は、次第に戦場の歩兵にとってかわられる兵器と言われるようになりましたが、何分戦車一台を量産するのにはお金がかかるもの。

そんな金食い虫の兵器を安価で破壊できる兵器の開発も、戦場の歴史の中で育まれたのです。

一番手軽な対戦車兵器を例に挙げれば、まず火炎瓶が挙げられます。

第一次世界大戦時から、敵戦車のエンジン部に放り投げて火災を発生させ、熱でエンジンを破壊し、走行を不能にする戦術や、ワイヤーなどを地面に張りつけ、無限軌道(キャタピラ)を絡ませて車輪を動けなくするなどもあり、最初に述べた対戦車徹甲弾をより強力化した対戦車ライフルなども研究され、歩兵の対戦車兵器は戦車と共に進化を遂げました。

第1次世界大戦後、各国の軍隊の陣地構築または戦車戦には、対戦用の砲が配備されるようになりました。

当初は人力と馬などを使い運搬する小型野砲が対戦車戦の主力兵器ではありましたが、それに合わせて戦車装甲も強化されていきました。

軌道を第一に重視した小型の戦車が、大型な砲を備える事が当たり前になり、それに合わせて重火器も装備される事が当たり前になり、より相手を心理的に圧倒する為にと、戦車は大型化していったのです。

そしてそれに合わせて第二次世界大戦前半と後半においては、戦車と野砲と高射砲など、戦車に対抗する為にと、大きく改良化され、歩兵が容易に使用できる兵器ではなくなりました。

対戦車砲は高初速の兵器となり、それを扱う為の部隊編成などが位置づけられ、いつしか軍事標語で「砲兵」となり、日本の自衛隊では「特科」となり、一般的な歩兵の武器から分離したのです。

より遠くから攻撃するのが理想的と、野砲はいつしか高射砲となり、遠距離から戦車を破壊する兵器となりました。

その一方で歩兵の兵器は独自の進化を遂げることになります。

まずその原初でもある小銃を基礎に対戦車戦を想定し、生みだされたのが対戦車ライフルでしたが、歩兵が一人一人に装備する事を前提において、当初の技術問題では進化する敵戦車の重装甲を破壊貫通する威力の向上が挙げられず、一時的に対戦車ライフル開発は断念されました。

そんな中。

第二次世界大戦下の後期の戦場の中で、砲弾に成型炸薬を内挿する技術が生み出されます。

これが一般的な対戦車兵器こと『バズーカ砲』です。

開発当初は野砲のような高初速ではなく低初速であるも歩兵装備の火器においても、十分に対戦車戦が可能であると位置づけられ、対戦車ロケット弾から、無反動砲や対戦車用の擲弾発射器などが開発されていき、歩兵における対戦車戦の幅が広がっていきました。

やがて第二次世界大戦後の冷戦下では、対戦車ロケット弾に誘導機能装置を装備した対戦車ミサイルが開発され、それら兵器はベトナム戦争やアフガン侵攻などの戦場で活躍し、アフリカの内戦や、中東の石油と部族間の争いである第四次中東戦争などで、対戦車兵器は新たなる時代の歩兵達の主力兵装になっていったのです。

あの有名な『RPG(ロールプレイングゲームではありません。一応ネタとして言わしていただきます)シリーズ』などもこの冷戦下の紛争地域で進化を遂げ、現在の歩兵における重要な対戦車兵器になったのも、それら上記の歴史があったからです。

また成型炸薬の登場により、より硬く戦車の装甲を増す事は当初は不可能で、一時は対戦車火器の前には無力だと軍上層部が結論付けた経緯もありましたが、戦車サイドもただやられているだけではなく、爆発反応装甲を開発させました。

爆発反応装甲とは英語にすればExplosive Reactive Armour。通称ERAになります。

これは対戦車弾の着弾によって生じる爆発と熱を爆発で相殺し、対戦車弾の着弾を緩める為に開発された防御装甲です。

でも装甲の上から装甲を付けることにより戦車の機動力に問題が生じる為、第三世代戦車からは爆発反応に強い素材である複合装甲ことComposite Armourが開発されていき、現在有名な90式戦車や01式戦車にも使用され、歩兵における対戦車戦を想定した進化を遂げたのです。

その結果、今では成型炸薬よりも、安定した運動エネルギーを利用し、より安価で確実に戦車を撃破できる対戦車ミサイルや対戦車ライフルなど開発が進められ、現在、今の軍事状況下においても日々、より強力な対戦車火器研究は各国の軍事研究で続いています。

そんな歴史の中で、対戦車兵器とは小銃とは違う形で進化を遂げ、あくまで対戦車戦を想定した兵器であり、進化した武器が対戦車兵器の概要です。

そして歩兵における主力である小火器こと英語で言うところのsmall armsは、単純に言えば歩兵が使用するものを指し、兵士個人が携帯できるものを小銃火器と言います。

より具体的に説明すれば以下のようになります。

小火器とは個人で携帯操作できる拳銃やまたは小銃を指し、それには短機関銃からショットガンにアサルトライフルも含まれ、軽/汎用の重機関銃もグレネードランチャーに手榴弾などが小銃火器となります

小型の迫撃砲や、対戦車用の無反動砲に携帯型ロケット弾や対戦車ミサイルなどは、一般的に小銃とは言わずに、総称として軽火器こと英語で言うところの──light weaponsと成ります。

と、上記の様に小銃火器と対戦車火器の区別は、兵器運用によるもので、威力の大きい小さいで区別されてはいません。

昔は対戦車火器は威力の大きな大砲を指し、歩兵のもつ小銃は砲よりも軽い為に小銃火器と比較的単純に分類できましたが、戦場における戦車の活躍や進化、また歩兵の機動化や機械化など、軍事技術の進歩や進化する戦場における兵器戦術の発展により、歩兵の使用するそれら武器や兵器の多様化にともない、分類はあいまいになっているのが現状でもあります。

と、以下の様に説明すれば、対戦車火器とは、小銃火器とは何かが分かってくれたと思いますが、一般的な人にはやはり解りづらいかもしれません。

もしあなたが小銃火器と対戦車火器の違いは?

と、聴かれた時は、一番分かりやすい答え方を教えておきます。

「小銃は歩兵の標準装備で、対戦車火器は歩兵が文字通り戦車と戦う為に開発した兵器の事だよ」

と、言えば一応に納得してくれる……筈です。

まあ普通に兵器に携わらない人生を送る人には違いは分からないかもしれませんが、自衛隊員なら知らなければいけない諸元であるには変わりありませんので、これでまとめさせていただきます。

 

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