元自にーさん(元自衛官)の自衛隊ブログ

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64式対戦車誘導弾|非常に扱いにくい兵器!

      2015/08/29

さて、前回は「MAT」について幾つかお話ししましたので、今回は01式軽対戦車誘導弾の初期である64式対戦車誘導弾について幾つかの諸元を挙げさせていただきます。

参考 84mm無反動砲と01式軽対戦車誘導弾の違い

まず自衛隊内での型式名はATM-1と呼ばれ、これは第二次世界大戦後に日本国が冷戦時代に独自で開発に成功した第1世代型の対戦車ミサイルを言います。

陸上自衛隊で使用される。対戦車誘導弾こと通称「MAT」の歴史は以下のようになります。

時は1950年代後半。

世界は東西冷戦の真っただ中。

日米安保の問題などで騒がしいご時世の頃、防衛省がまだ防衛庁だった頃、日本国の自衛隊は創設当初からずっとアメリカ軍の武器や兵器の補給と供与に依存しきっていました。

これではいざという防衛もままならず、自衛隊内装備の国産装備体勢と量産補給の確保を得る為、日本独自の兵器の研究開発を行いました。

その当初の計画では、本土の防衛任務にあたり、対戦車戦を想定した兵器の開発が第一に進められました。

北方四島しかり沖縄戦然り。

日本は本土防衛に神経質でもありました。

そう言った思惑の中で生まれたこの兵器こと、64式対戦車誘導弾です。

戦後の日本で初めて造られた純国産の対戦車誘導弾がこれでした。

開発は1956年に国から発注を受けた、戦前の日本の軍事、経済の近代化にもっとも貢献した造船や飛行機開発に有名な川崎重工業が行ない、あの64式自動小銃と同じ時期の1964年に、全自衛隊内において制式配備されました。

そして正式採用後。

各師団に対戦車隊が配備、配属が決定していき、その後には、79式対舟艇対戦車誘導弾などの採用も始まり、普通科の中隊内対戦車小隊に配備されていく事になります。

そして日本国内においてもっとも頼もしい対戦車兵器として、本土防衛の要として挙げられていきましたが、それら兵器は決して実戦で使用されることは無く、新型の対戦車兵器開発や、84mm無反動砲にラムなどの実戦配備化が進み、そして87式対戦車誘導弾などの新型の対戦車兵器が開発されていきました。

そして実戦を経験する間もなく、平和な時代の中でその役目を終え、1990年代に製造は停止し、2000年には各自衛隊の部隊からもお役御免となり、無事退役となりました。

実戦を経験する事なき兵器。

今では老朽化に伴い、全てが廃棄されたと聴きます。

演習などでは花形で、よく車両等に搭載し使用している画像や動画が沢山ありますが、この兵器は地上に設置しての使用も可能であり、専用の三脚を用いて、陣地防衛の要としても活躍していたのです。

自衛隊内の各車両である、73式小型トラックの後部や、60式装甲車を始め、73式装甲車などにも搭載携行して戦地を駆け回り、多方面で使用できる兵器。

74式戦車にも搭載は可能(この辺りは眉唾であまり信憑性はありませんが、一応は装備可能なアタッチメントが存在していたとの噂があります)で、また大型のボーンイング・バートルヘリコプターなどにも装備可能だったと、その活躍の幅は広く、陸上自衛隊内においてまさに陸戦の隊戦車戦の主役だったのです。

そんな64式対戦車誘導弾のシステムは、当時画期的だった日本では開発は不可能だとされていた手動指令照準線一致誘導方式が使用されていました。

英語にすると──Manual Command to Line Of Sight MCLOSとなります。

軍事用語抜きで解りやすく説明すればミサイルの誘導方式で、射手による指令誘導の一種であり、これは第1世代のミサイルで主に使用されていた技術でもありました。

発射時、撃ち出された対戦車弾こと解りやすく言えばミサイルは、射手が発射箱に連動した操作機(ラジコンのプロポやジョイスティックを想像していただけたなら解りやすいと思います)による、射手による手動による操縦で、方角をコントロールしながら、目標まで誘導する方式を取っていました。
射手の発射操縦は無線通信か有線通信(ワイヤーでコードを引きながら撃ち出される方式)で対戦車弾に伝達され、標的である敵戦車に確実に着弾させる技能が必要となります。



非常に練度の高い射手が必要!

06_檄を飛ばす!
射手が標的である戦車と対戦車弾を確認しながら、常時眼を離さずに視認させながら命中させる事が重要視されました。

ただこの兵器。

非常に扱いづらいです。

まして高速移動する対戦車弾ことミサイル。

早すぎてうっかりしてしまうと操作する間もなくに目的に近づいてしまい着弾してしまうと、その操作には相当の腕が必要だったと聴きます。

ましてや戦場か実戦となると、上手く使用できるのかとの不安もあったみたいです。

外においては先ず、風や風圧による軌道修正の調整なども考慮し、悪天候や視界不良な濃霧の発生などにも左右され、真夜中や早朝などの昼夜問わない時間でも、いざとなれば使用しなければいけないこの兵器。

使用には人員が5、6人ほど必要だったみたいで、誘導弾本体にその運搬用コンテナと発射台に照準装置と操作機の運搬にはそれだけ必要だったみたいです。

体力も相当必要になり、この兵器の担当となった対戦車隊員は、体力錬成に日々気を使っていたみたいです。

バーベル上げに、重り運びなど、毎日日課になってみたいです。

でも一番大変だったのは射手になった隊員らしく、射手は相当の練習を強いられたとの経緯もあります。

確実に肉眼で捕捉しながら対戦車弾を操作し、命中または着弾できるようにしなければいけない、今の電子兵器が当たり前になっているこの時代において、本当にあったのかと思われる兵器かもしれませんが、実際にあったのです。

最初の命中精度は非常に悪く、射手になる人間は自衛隊を除隊できなくなるとの噂もありました(本当かどうかは知りませんが)。

それら問題に対処してか、対戦車弾の後部には曳光弾(自動小銃や機銃使用時の弾道を確認する為に、薬莢から射出後に発火して紅い線を引きながら弾道を射手が確認できる弾丸の事)と同様に、発射時にマグネシウム式の発火システムのフレアが着火できるようにと装着される様になり、射手が解りやすく命中させやすくと、追加されました。

でもこれら対戦車弾を人間が目視確認しながら操縦するという性質は改善されぬまま、レーザーポイント式の誘導システムの登場までは、ずっとこの方式でした。

またケーブルを引っ張りながらの推進のため、発射速度が非常に遅くなってしまう失速欠点もある為、着弾まで時間があまりにもかかり過ぎてしまい、また目標に避けられてしまうとの問題もありました。

しかも発射時に発生する大量の噴煙をまき散らしてしまい、居場所が的に発見されやすいとの致命的な欠点もありました。

こう言った上記の経緯で解るように、この対戦車弾を使いこなすにはかなりの、それなりの訓練と演練を積む必要がある為に、この射手となる人はラジコンカーの操縦練習が必要だったと、当時の人に聴きました。

(実際に中隊に練習用のラジコンカーがあったみたいです。また演習の際にも対戦車弾に見立てたそれで行ったとの話もあります)

こう言った兵器の命中精度の是非は、まさに射手の日々の努力と技量によって左右されてしまい、中には鬱病になってしまう隊員もいたそうです。

また専門家の実戦研究においても、この対戦車兵器は必ず一撃必中は困難と結論付けられ、まして相手もただ撃たれるのを待っているわけでもないので、当然反撃も考慮すれば、間違いなく無駄弾になることも多いと、結論付けた経緯もあります。

まだ電子兵器があまり発達していない時代。

射手独自の判断力と反射速度に非常に左右されてしまい、また対戦車弾の速度にも限界があり、射撃時にはなるだけ近づかなければいけないとの問題もあり、遠距離から敵戦車を標的に発射しても、命中精度がすごく下がってしまうなど問題だらけの兵器。

また発射時には敵に居場所を悟られてしまい、発見されて射手の危険性や反撃などの対処も大変リスキーだった為、いわゆる特攻兵器として見られる様になってしまいました。

実際に使用することがなくて良かったと、その当時射手だった隊員は言っていました。

車両に装備して戦闘するよりは、陣地防衛や偽装し、隠れて使用する隠匿の兵器として特出するようになり、やがて発射方法をコンピューターに任せる半自動指令照準線一致誘導方式こと英語で言うところの──SACLOSに取って代わられていき、それらを採用した87式対戦車誘導弾や01式軽対戦車誘導弾へとその座を渡し退役していったのです。

誰を傷つけることなくその役目を終えた兵器はこの国には沢山あります。

願わくば、これからもそうあってほしいと思います。

兵器を使用する様な問題が発生しない事が、一番望ましいのですからね。

 - 部隊の自衛官へ






Comment

  1. 月陽 より:

    始めまして、現在20歳私立大学生なのですが、目標も定まらずぷらぷらと日々を過ごしていました
    しかし20代の内に1000万円程貯金して、海外に移住し現地の大学などで専門技術を身に付けて新しい人生を始めるという夢ができました、そこで貯金できて、体と根性を鍛えることができ、災害救助な人の役に立てる自衛官に大変興味を持っています

    そこでなのですが
    ・3任期6年間で節約すればどれくらい貯金することを期待できますか
    ・大学中退は入隊のハンデになりますか、また現役時代に大学中退し入隊した人は身近にいましたか

    • 元自にーさん 元自にーさん より:

      3任期勤めて本気で節約すれば、1000万円貯金は可能です。

      大学中退どころか、高校中退もよくいます。
      まったく問題ありません。

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